NPV法およびIRR法と他の方式の比較



 企業がどのような投資戦略を採用するかということは、その企業の将来を左右する重要な意思決定問題である。複数の投資プロジェクトの中からよりよいものを選び出すには、次のような方法がある。





○NPV法(=純現在価値)

 キャッシュフローの現在価値の合計額から投資支出を引いた額を用いた評価方法。投資支出は現時点のみ発生し、再投資は無いものと仮定する。
 正のNPVを持つプロジェクトは必ず純利益をもたらすので、資金調達が可能である限りはそれらを調達すべきである。複数のプロジェクトから一つを選択する場合は、NPVの値の大きいものを選択すればよい。
 利子率(r)を直接用いてキャッシュフローの現在価値を計算するので、意思決定者が定めるrの値により、直接プロジェクトの価値が変わってくる。つまり、rはとても重要視されることになる。
 複数の投資プロジェクトを選んだ場合、それらの総合的な価値を測るには個々のプロジェクトのNPVを合計すればよい。(=加法性を持つ)
 但し、対象が相互に独立したプロジェクトとして整理されていることを条件とする。


○IRR法(=内部収益率)

 NPVと同様に、時間と経済価値の関係を重視した方法。この方法は、NPVをゼロにするような割引率を求める。
 NPV法と異なる点は、割引率の計算プロセスにおいて、利子率(r)は直接反映されないこと、複数の投資プロジェクトを選んだとしても、個々のプロジェクトのIRRを加えることは何の意味も持たない(=加法性を持たない)ことである。


○回収期間法

 対象となるプロジェクトから期待される将来キャッシュフローを、何期間累積すれば初期投資額が回収できるかを重視した方法。つまり、いかに早く金を回収できるか、いかに早く資金を取り戻すことができるかに要点を置いた回収法である。
 単一のプロジェクトの場合は、あらかじめ定められた期間内で回収できることを条件とする。複数のプロジェクトの比較であれば、回収期間の短いものを選好する。
 しかし、この方法は以下の理由により合理的とは言えない。
理由1.とにかく投資資金の回収が最重要なのか?資金回収のことばかり考えて会社経営がうまくいくとは思えない。
理由2.回収後は追加的な支出より収入が得られる場合の方が多いのか?回収することだけ考えていると、回収が終わった時の収入のことまでしっかり気が回っているとは思えない。
理由3.実際の意思決定では将来キャッシュフローは不確実なのではないか?あくまで推測であるのだから、もっと全体に目をむけてやらないと現実に沿った推測は出てこない。


○平均収益率法

 会計的利益率法。帳簿上の利益と資産簿価の関係を重視したものである。  投資プロジェクトがもたらす期間収益の平均と投資の資産簿価の比率を既存のビジネスや業界平均の当該比率と比べて評価する。
 ただ、価値とは常に変わっているもので、その価値の時間的な変換にはあまり要点を置いていない。




 これらのうち、回収期間法と平均収益率では、価値の時間的な変換をしていない。これは致命的な欠陥である。よって、上記の4つのプロジェクト評価方法のうちで有効なものは、NPVとIRRのみである。
 但し、企業において、NPVやIRRは参考程度には用いても、意思決定における中心的な指標とは認められていない。実際の企業で幅広く使われているのは、致命的欠陥があるといわれている回収期間法や平均収益率である。